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2022.10.20 【瀬戸内ふれあい紀行】来島者の声をお届けします [本島編]

香川県唯一の国の重要伝統的建造物群保存地区を有する丸亀市の本島。この島は、かつて塩飽水軍の根拠地として発展し、豊臣秀吉や徳川家康からも自治の特権を与えられ、瀬戸内海の統治に重要な役割を果たしてきました。漆喰塗りの白壁や、なまこ壁に千本格子の窓をあしらった町並みから、塩飽大工の伝統的な技術を体感できます。

かつて石切り場が多く存在した本島。この島を含む備讃諸島を舞台とする「石の島」の物語は、地域の歴史的魅力などを通じて日本の文化・伝統を伝えるストーリーとして「日本遺産」に2019年、認定されました。島では、石との関りを考える作品も楽しむことができます。



丸亀港からフェリーで35分の本島。平たんな道が多く、坂が比較的ゆるやかなため、さわやかな秋風を感じながらサイクリングするのが醍醐味です。港付近のレンタサイクルの待機列に並ぶ丸亀からお越しの30代女性は「本島には、意外にも初めて来ました。自転車に乗って島を巡り、全ての作品を鑑賞するのが楽しみです。」と笑顔です。


ho01《Vertrek「出航」》 石井章

本島港に到着してすぐの場所にあるのは、日本で初めて太平洋を渡った軍艦「咸臨丸」の彫刻です。「咸臨丸」の船員には多くの塩飽出身者が選ばれていました。

鋼で出来た彫刻の前でポーズをとるのは、徳島からお越しの40代男性。「浮遊感があり、とてもかっこいいですね。かつて水軍を誇った島の歴史の象徴のように感じます。」と語っていました。



国の重要伝統的建造物群保存地区に認定された笠島集落を目指す道のりも楽しめます。趣のある昔ながらの家々、ススキやコスモス、さらには海や砂浜を眺めることができます。本島港から自転車を走らせること約10分(徒歩約30分)。笠島集落にたどり着きます。このエリアには、石にまつわる作品が集まっています。


ho15《SETOUCHI STONE LAB》 川島大幸

笠島集落のメイン通りに面した旧家の入り口には、巨大な石が展示されています。この石は、本島の隣の島・広島で採掘された青みをもった御影石「青木石」です。

本島で暮らす80代のおばあちゃんは「大きな石を見るだけでも元気をもらえるよ~。ぜひ石に触れ合ってみてね~!」と生き生きと話していました。

部屋の中に入ると、小さな青木石が1つ、ショーケースに飾られています。その石の重さはちょうど1キロ。「1.000」という文字が刻まれ、緑色の計りに載せられています。
1キロでない石は裏庭に展示され、それぞれ重さが記されています。

「1.034」、「1.544」・・・様々な数字が印字されている石たちを裏庭でじっくり見つめるのは、東京からお越しの50代女性。「この石たちにも個性がありますね。石を人間にたとえてみると、スーパースターも何かの巡り合わせで目立った存在になっただけだと感じます。有名でない人にもそれぞれ素晴らしい人生があることを実感し、なんだかほっとしました。」と満足そうな表情でした。



ho16《石が視力を失っていないように、盲人も視力を失っていない。》 アリン・ルンジャーン(タイ)

この空き家では、大きな石に無数の赤色のロープが張り巡らされている、独特な雰囲気。1本1本のロープの先には竹と小石で作った風鈴が吊るされ、赤いロープで石と繋がっています。作家の母国、タイでは赤いロープは幸運という意味があるそうです。

窓から風が吹き、竹と小石がぶつかり合う音に耳をそばだてるのは岡山から来た30代女性。「かすかに聞こえる風鈴の音は軽やかで、とても落ち着きます。目の見えない人が音を楽しめるのも素敵だと思います。」と嬉しそうでした。

東京から訪れた20代女性は「日本人の発想では生み出せない独特な空間だと思います。石がまるで生きているようで、神聖なものに感じました。」としみじみ話していました。



ho12《レボリューション/ワールドラインズ》 アリシア・クヴァーデ(ポーランド/ドイツ)

こちらは、塩飽大工の技術が堪能できる日本家屋です。部屋にあがると、ステンレスのリングと石を使った、惑星の軌道をイメージした作品を楽しむことができます。

天井の石を眺めるのは東京から来た小学4年生の女の子。「かわいい石だなぁ~。空中遊泳しているみたいで、とても面白かった~。」と喜んでいました。

茨城からお越しの30代女性は、「石は庭にあるイメージですが、和室に並べてみてもいいものですね。家に帰ったらさっそく、大きい石を和室に飾ってみます。」と笑顔で話していました。

兵庫から訪れた40代男性は「このリングを石に通す技術がすごいですね。どうやったらこんなに綺麗にできるんでしょう。」と驚いた表情。さらには「この空間は奥行があり、石との色合いも良く、とても素敵ですね。」と語っていました。



ho14《無二の視点から》 藤原史江

この家では、サンドペーパーに石を擦って描かれた絵画を展示しています。それぞれの石たちが置かれていた場所から、石の視点で見た風景です。描画によって擦り減った石も展示されています。

広島からお越しの20代男性は「モノクロの写真かと思うくらい輪郭が精妙に描かれていて本当に驚きました。白、黒ともにいろんな表情があり、石で描く技術は絵具とは違った楽しみがありますね。」と目を輝かせていました。

「石に命を感じて、とても愛おしくなりました。邪魔で蹴飛ばす時もあったけれど、これからは大事にしていきたいです。」と熱心に語るのは茨城からの60代女性。「石に限らず、樹木でもそれぞれ見てきた景色や歴史があります。言葉を発しはしないけれど、いろいろ想いがあるんでしょうね。」と目を細めていました。



ho13《水の下の空》 アレクサンドル・ポノマリョフ(ロシア)

笠島集落を出ても、鑑賞の楽しみは尽きません。西向きの海沿いの道を自転車で約3分。自転車を降り、砂浜に向かう道を歩いて進んでいくと、広い場所に3隻の大きな船が浮かんでいます。

色々な角度から船の姿を眺めるのは、東京から訪れた40代アメリカ人男性。「本物の船かと思いました。揺れていて飛行機の翼のようなイメージも抱きます。このロケーションにもワクワクしますね。」と愉快な表情です。

「やわらかい色合いです。網やロープなど道具で作られているのも面白いですね。」と笑顔を見せるのは一緒に鑑賞する奥さん。「島の人のなりわいには船が欠かせないと思いますが、この船の姿からロシアの漁村も連想できます。アートは国境を越えますね。」と語っていました。



ho17《遠くからの音》 DDMY STUDIO(タイ)

本島港を目指して南下し、自転車で8分ほど走らせて到着するのは海に近接する一軒の家。暗い室内に入ると、小さな昆虫ロボットがあちこちで待っています。ロボットに近づくと光が消えます。

京都から来た小学2年生の男の子は「ホタルみたいでとてもかわいかった~。いつ光るのかドキドキしたよ~。」と満足そう。

「キィーーン。」「キィーーン。」という鳴き声に浸るのは、東京から訪れた30代女性。「それぞれのロボットで音が違い、まるでハーモニーを奏でているようです。綺麗な音でリズムも良く、この幻想的な空間にぴったりですね。」と感動していました。



本島港へ帰る道のりは自転車で6分程度。途中の塩飽勤番所跡では、島の歴史を深く知ることができます。伝統と歴史が息づく塩飽の中心、本島。どこか懐かしく、心地の良い空気感です。
(続く)

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